軍人に包囲される
2008.12.01 22:45 ニジェール Niger

◆ サヘルに咲く花
ボロロの美男子に会いに行くぞツアー。集団シッコに現を抜かし、その事ばかり書いてきましたが、ついに動き出します。本日の「アフリカいぼ痔紀行ニジェール編」も、前回の続きだよん!
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「アフリカいぼ痔紀行」ってなにっていうおともらちは、暇だったら以下を読んでくださいね!
◆ 名誉領事館
◆ あたしがマラリアにかかったら…
◆ あたしの秘密、暴露します!
◆ お喋りなパリの夜
◆ お洒落すぎ!
◆モロッコ本編
◆ベナン本編
◆ニジェール本編
◆番外編「世界の看板」
![IMG_1246[1]](http://blog-imgs-19.fc2.com/t/a/b/tabetabi/20081104180710s.jpg)
トゥアレグ浜田 ボロロ族オルティ
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ぐうぉ〜んというエンジン音が鳴り響き、バスが小刻みに震える。その音を合図に、外で井戸端会議に勤しんでいた乗客が慌ててバスに乗り込んでくる。
準備は整った。ついにバスが再出発する。護衛の軍用車が滑るように走り出すと、むずむずしていた長距離バスも元気よく後を続く。政府軍護衛と長距離バス数台の大連隊が、風を切ってサヘルの大地を走り抜けて行く。
それにしても猛スピード。年代物のおんぼろバスがよくもこんな速度で走れたもんだと、褒めてやりたいぐらい飛ばす飛ばす。それも舗装されていない道だけに、むやみやたらと揺れる揺れる。
ニジェールの制限速度っていったい時速何km? そんなのあってないようなものなの? それより護衛は制限速度守っているの? 色々突込みを入れたくなるぐらい、まじで凄まじい。
まっ、先に進んでるんだからいいか! やはりバスは走ってこそバス。行け〜バス、走れ〜バス。風をきって進めバス。
外の景色は、いくら進めど代わり映えがしない。どこまでも集団シッコ現場と同じ、サヘルの荒野が広がっている。窓越しの景色を眺めていると、先ほど目にした光景が、走馬灯のごとく脳裏に蘇ってくる。集団シッコの様子が頭から離れないというのも、何と言うべきか、旅浪漫台無しである。
それでも、集団シッコには随分と感謝している。退屈な待ち時間があっという間に過ぎ去ったのは、紛れもなく集団シッコのおかげだ。あのような素晴らしい見世物がなかったら、待ち時間は永遠に感じられたことだろう。
だから、再びバスが停まった時には、今度はどうやって時間をつぶそうか真剣に悩んだ程だった。
バスは順調に進んでいるかのように思えたのだが、走り出して1時間、我々が乗ったバスだけが急にスピードを落とした。そして間もなく車体を路肩によせ停車した。政府軍の四駆1台が、我々のバスと共に残る。他のバスと軍用車は、我々を見捨てて先を急いだ。
多分ちょっとした故障。部品を取り替えるか、メンテナンスが必要なのだと思う。アフリカでは良くあることだ。この程度のことでは動じない。それでも、他のバスは順調に走って行ったので、何だか貧乏くじを引いた気分であはあるが…
再び、乗客はバスを降りる。中にはまた、そこいらで用を足す者も現れた。しかしやはり、スケールが違う。バス1台程度では、数人がぽつりぽつりと野ションをしている程度だ。先に目撃した集団シッコの足元にも及ばない規模。そんなものを見ていても退屈だし、これだけ個人的な行為を凝視していたら、それはどう考えても単なる覗きでしかない。さすがにあたしも、ニジェールまで来て痴漢行為に手を染めるつもりもないし!
退屈しのぎに、あたしはバックからカメラを取り出し、写真を撮り始めた。おもむろにバスから離れ、シャッターを切る。見たことのないサヘルに咲く花にフォーカスをあわせたり、あたりの景色を写したりと、楽しい時間をすごしていた。
でも実は内心、花というよりバスだった。バスの写真が撮りたい。でも、バスを撮れば、確実に抜けに軍人と軍用車が入る。もちろん、状況を映し出すためには、そういった構図の写真が撮りたいわけだが、軍隊とは写真撮影に敏感な種族である。基本的に軍事施設というものは、世界中どこに行っても撮影禁止だし、どこの軍隊も、写真撮影に関しては厳しく取締るものだ。


◆ 前出。ザンダールからアガデス移動の際に撮った護衛のスナップ
それならばそうと、最初からそれ相応の対応をして欲しい。ところが、ザンダールからアガデスにバス移動して来た時、護衛の皆さんは思いのほか気さくだった。中には写真を撮って欲しいとせがんできて、カメラ前でポーズをとろうとする軍人もいたのであある。そんな経験から、ニジェールはもしかしたら軍関係の写真はOKなのかもしれないという、甘い気持ちが芽生え始めていた。
撮っちゃおっか! 撮ったもん勝ちでしょ。おもむろにバスにカメラを向ける。ファインダーをのぞき、色んなアングルから色々なサイズのバスを撮る。軍隊もいることだし、面倒くさいことにならないうちに、さっと撮ってしまおう。一応、あたしなりには気を使ったつもりだった。
ところが、あたしが写真を撮っていることに気がついた軍人数人が、血相を変えてあたしの元に走りよってきたのである。あ〜あ。やっぱり駄目だったか。あたしは思わず舌を出した。確信犯的な行動ではあったが、やはり駄目だった。真っ青になっているのだけれど、全然真っ青に見えないトゥアレグ浜田もやってきて、強張った表情であたしのことを見守っていた。
「何を撮っているのだ。撮ったものはすべて消しなさい」
軍人の一人が居丈高にそう言う。そして、上司らしき人物に耳打ちしている。この女、やたらと写真を撮っていましたよと… ちくって自分のお株を上げようっていうのかい。小さい男だこと!
「そこに咲いていた花を撮っていただけよ。お見せしましょう。花まで消さなくちゃいけないんですかね?」
「嘘を抜かせ。全部見せろ。撮ったものを全部見せるんだ」
「わかりました。お見せしましょう」
あたしはモニターに写真を出して、あたしを取り囲む数人の軍人どもに、一枚一枚見せてやった。そして、抜けに軍の四駆が写っているバスの写真が出てきたところで、
「これが問題なのですね。この写真を消しましょう」
そう言って、速やかに問題の一枚消した。ほら消しましたよと、種も仕掛けもありませんよと言う手品師のように、大げさにカメラを軍人に見せつけつつ…
その時、あたしは、不良高校生のようにふてぶてしくなっていた。大人になってこの方、こうやって権威ある立場の人から居丈高な態度で取り扱われる機会は少ない。それでも、決まってこういう気持ちになる時が度々ある。大体旅をしている時。ビザを取りに行った大使館。空港の入国管理局や税関。国境の警察や軍隊。こういう奴らは、決まってあたしを、補導された高校生のような気分にさせるのである。
反抗したい! なんだろうか、この気持は。意味もなく反発したくなる。支配するものには支配するものの信念と哲学があり、そして任務がある。それは組織の意思であり、組織を守る為に必要不可欠な行為なのだ。そうわかっていても、逆らいたい。その居丈高な態度に、何だかむかむかする。まるで担任の先生に反抗する高校生のように… ちょっと「ごくせん」の見過ぎかな!(笑)
自分のカメラの機械操作には慣れていた。悪知恵が働き、1枚消した後は、どうでもいい写真を次々と見せてやった。アガデスの泥のモスクの写真や、無邪気に笑っている子供たちの写真。どうでもいい写真を次から次へと見させられている軍人達は、明らかに解せない表情をしている。納得がいかないのだ。途中から、写真鑑賞会のようになってくる。あたしは上ずった声で、これはアガデスのモスク、これはアガデスの子供たちよと、素っ頓狂なキャプションと共に、写真の説明を続けていった。
そんな時、丁度よいタイミングで助け舟が出た。
「バスが直ったぞ!」
軍人どもも、納得の行かない写真鑑賞会にちょっと飽きてきたところだった。かなり都合がいい。バスが直ったとなれば、このまま再出発という運びになる。
「OK。もう行って良し」
あたしはついに軍隊から釈放された。あたしは、やるせない気分でバスに乗り込む。ちょっとばつが悪くて、トゥアレグ浜田の顔が見られれない。あはは、ごめんね。余計な迷惑をかけちゃってさ… そんな素直に謝れるはずもなく、ただ伏目がちに、バスの座席にしょんぼりと座っていた。
続く。
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